第31話
ある日の放課後の事だった。グラウンドから野球部のノック練習の音と掛け声が聞こえていたので、時間は大体午後四時半くらいだったと思う。
帰りのホームルームを終えて、いったん職員室に戻っていた僕だったが、少しして教室の教壇の中に急いで仕上げなくてはならない報告書の束を置いてきた事に気付いた。
翌朝には教頭に提出しなければならない大事なもので、家に持ち帰って仕上げるつもりの書類だった。僕は自分の間抜けぶりに自嘲しながら、春の木漏れ日が差し込む廊下を少し早足で進んでいた。
三年A組の教室まであと五メートルという所まで来た時だった。温かな空気が纏う廊下の中をつんざくような声が、そこから響き渡ったのは。
「…もう、いやぁ~!!」
「きゃあぁ!!」
聞こえてきたのは二人分の女子の声。しかも聞き覚えのある声に、僕の足は反射的にスピードをあげていた。
「どうした!?」
叫びながら、教室のドアを開ける。そこにいたのは、斉藤と城ノ内、そしていつかコンビニで見た二人目と三人目の女子生徒だった。
だが、僕が彼女達を「ただ、そこにいた」と思えなかったのは、その様子があまりも異様だったからだ。
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