第25話
何だかおかしさを感じて、僕は彼女達に気付かれないように少し離れた場所にある書棚に向かい、雑誌を読むふりをしながら、様子を窺った。
彼女達は数分ほど店内を連れ立ってうろうろと歩き回っていたが、やがて深夜の勤務にあまりやる気のある態度を見せていなかった若い男の店員がレジの奥に引っ込んでしまったのを確認すると、足早にお菓子が置いてある棚に向かい、何やらごそごそし始めた。
それと同時に遠く小さく聞こえてきた、いくつかの声。
「ほら、早く…」
「グズグズすんなよっ」
「やらないと、どうなるか分かってんの…?」
普通じゃない会話の雰囲気に雑誌を持ったまま、僕は彼女達に目を凝らす。彼女達の腕の間を縫って見えたのは、四人目の子が震える手で一口チョコの数々を鷲掴み、そのまま自分の学生カバンの中に入れようとしている様だった。
「なっ…!!」
どう見ても万引きにしか見えない。そして、今まで生きてきた中で初めて見る光景に驚いてしまい、力が抜けた僕の手から雑誌が滑り落ちた。
バサリッと両開きの形で床に落ちたその音は思ったよりも店内に響き、それが聞こえた彼女達と僕の視線は瞬く間に合わさった。
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