第17話


 さほど収納能力が大きくない物置から予備の布団一組を引っ張り出し、自分の分と一緒に部屋に敷いてしまえば、それだけでずいぶんと狭くなるものだ。


 必然的に大の男二人が横になるには窮屈となってしまい、私と高志は互いの邪魔にならぬよう自然と背中合わせで床に就いた。


「電気消すぞ」

「はい…」


 天井から伸びる蛍光灯の紐を引っ張って電気を消せば、静かな暗闇が私達を覆い被さった。もはや二人分の呼吸音だけしか聞こえない。


 二人で酒を酌み交わしたのも初めてならば、こうやって一晩一緒に過ごすのもそうだった。


 まだ一緒に暮らしていた頃は、何とか深夜に帰宅できた時に幼い彼の寝顔を覗き込むだけで精一杯だった。それも片手で数えるほどでしかないのだが、とても愛おしく感じたのを覚えている。


 今現在の高志は、いったいどんな顔で眠るのだろう。相変わらず、背中の向こうからは規則正しい彼の呼吸音しか聞こえない。昔のように覗き込みたくても、窮屈な部屋の狭さのせいで、ちょっと身じろいだだけでも迷惑に思われるだろう。


 そうでなくても、高志はもう子供ではないのだ。馬鹿な考えを起こしそうになった私の耳に、当の本人からの「お父さん」と呼ぶ声が届いた。私は少しだけ肩を震わせた後、慌てて返事をした。

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