第14話
これまでほんの少しの交流しか持てなかったのだが、高志の性格面で一つだけはっきり分かっている事がある。
彼は子供の時分から、かなりの頑固だという事。一度決めてしまった事は梃子でも変えない。
口を真一文字に結んで、私から少しだけ顔を背けてしまった様を見て、これはそう簡単に話さないだろうなと私は諦めた。
昨日までの私だったら、例えどれだけ時間がかかっても彼が話すまで何度だって諭して、促して、待っていただろう。だが、もう私は刑事ではないし、そもそも高志は私の息子であって、被疑者でもなんでもないのだ。
長年染み付いてしまっている職業病とやらに、私は一瞬だけ苦笑を浮かべた後、ゆっくりと腰を上げて部屋の奥の壁に立てているタンスに向かった。
「分かった。とにかく包帯を変えよう、消毒液も一応あるからシャツを脱げ」
「はい、すみません…」
高志は私に軽く頭を下げると、そろそろとぎこちなくYシャツを脱ぎ始めた。
高志の右腕の傷は、明らかに刃物によるものだった。
縫わなければいけないほど深いという訳ではないが、それでも二の腕の外側から肘に掛けて約十センチもの長さで切り付けられていて、とても掠っただけという高志の言葉を信じられなかった。
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