第63話
「ぐあっ…」
ガツンとした衝撃が痛み分けとなって、リュウジの頭にも残る。だが、相手の男の苦痛の声も聞こえてきて、手応えはあったと確信した。
それなのに、ナイフ使いはすぐにリュウジから離れてしまって、またどこにいるのか分からなくなった。
「ちいっ、ユウヤの腰巾着だと思って油断したぜ」
ナイフ使いの声が離れた所から聞こえてきた。リュウジは素早く近くの壁に背を付け、周囲に気を配る。
ナイフ使いの言葉は続いていた。
「レッド・ティアーズはユウヤのワンマンチームで、他の奴らは大した事ねえと思ってたが、俺のナイフにここまでしつこく生き残るなんてよ」
「褒めてんのかけなしてんのか、どっちかにしとけ。言っとくけどな、ユウヤだけでレッド・ティアーズはもってんじゃねえよ」
「はっ。もうすぐ死ぬような奴には褒めねえよ」
言葉が終わった途端、リュウジの足元の床に投げナイフが数本突き刺さった。身の危険を感じたリュウジは、できるだけ上半身を屈めるようにして、その場から走り出した。
「心臓を一突きにしてやろうかと思ったけどよ」
ナイフ使いの声が響く。
「近付いた時に反撃を受けてちゃ、キリがねえ。手応えが味わえねえのはもったいねえが、こいつで死ぬまでいたぶってやるぜ」
ナイフ使いの言葉が終わる度に、投げナイフは追尾弾のような正確さでリュウジを追ってくる。リュウジはもう、立ち止まる事すらできなくなった。
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