第57話
『おい、ホークアイ。別の足音も聞こえるぜ?』
「え?」
言葉を返してきたのは、サウンドと呼ばれている男だった。生まれつき聴力が常人より優れているのを生かした、かなり好戦的な奴だったなとホークアイは覚えている。
そのサウンドが、自信たっぷりな声で続けた。
『俺達が入ってきた裏口からだよ』
「へえ…」
椅子から立ち上がったホークアイの目は、すでに別のモニターを捉えていた。
位置が固定されたその監視カメラが映し出したのは、警備員達の死体が折り重なっている裏口から、緊張の面持ちで潜入の一歩を踏み出そうとしているリュウジの姿…。
「サウンド」
ホークアイの目が、すうっと細くなった。非常に不愉快そうな表情だった。
「このビルのシステム全てをハッキングされてるって分かってないのかな?レッド・ティアーズの奴らは…」
『ふん。俺が一階の担当だったのを、死んでから後悔させてやるよ』
「フォローしてやろうか?」
『余計なお世話だ、お前は電源管理ルームだけ見張ってろ』
じゃあなと言ってから、サウンドは通信を切る。
再び椅子に座ったホークアイは、これからの成り行きを見物してやろうと、リュウジが映るモニターをしばらく眺める事に決めた。
そのせいもあって、一番右端にあるモニターの画像が一瞬揺らめいたのを、彼は気付く事ができなかった。
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