戦闘(1)

第55話

センタービル一階の東端に、やたらと広い電源管理ルームがある。


 それに隣接する形で事務室もあるのだが、本来いるべき警備員は全員射殺された。現在、その事務室と電源管理ルームを支配しているのは、『キリング・アーミー』のメンバーの一人、ホークアイと呼ばれる男だ。


 自分の仕事が一段落着き、ホークアイは深々と椅子に座ると機嫌良く口笛を吹き始めた。


 彼の『キリング・アーミー』での役割は、専ら諜報活動である。


 特にハッキングに関しては、自分の右に出る者はいないだろうという自負がある。例えば仲間が暗殺を計画すれば、ターゲットの個人データなんて十分で盗んでやれるし、最も命を狙いやすい情報を得るのも簡単だ。


 そもそも、このビルの占拠と籠城だって、自分がいるからできた事なのだと、ホークアイは目の前にあるいくつかのモニターを見た。


 防犯の為にビルの各階至る所に設置された監視カメラは、ハッキングによって今は完全にホークアイの支配下にある。


 数秒ごとに目まぐるしく映す場所を変えていくモニターだが、ホークアイはそれらをきちんと確認していく。全ての監視カメラが、ホークアイの目となっていた。

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