第50話

「ま、待て!ユウヤ!」


 そのまま勝手にセンターの中に入ってしまわれたら敵わないと思い、轟木が慌ててユウヤ達の前に出た。


 拳銃を持っている彼の姿に、忌々しい以前の記憶が蘇る。「てめえ、この前の…!」とリュウジが反射的に身構えるが、ユウヤの肩越しに咎める鋭い視線を受け、すぐに動けなくなった。


「ぐっ…止めんな、ユウヤ!」

「時間がないと言ってるだろう。お前の目的も果たせなくなるぞ?」

「…ちっ!」


 大きな舌打ちをして、リュウジは拗ねた顔で足元を見つめる。そんなリュウジにユウヤは小さく溜め息をついた後、轟木に向き直って会釈した。


「怪我、良くなってきてるみたいで安心しましたよ」

「そっちは仲間を一人亡くしちまったな。できれば、生かして捕まえてやりたかったが」

「どうせ同じ事だし、オガさんは後悔していないはずだ…それより、今はあいつらだろう」


 ユウヤはセンターを見上げた。相変わらず四階の窓枠ではゴールドが腰を掛けていて、「へへへ…」と挑発的な笑みを浮かべている。


「どうやって本郷様を連れてきた?」


 轟木は本郷宗一郎をちらりと見やった。拳銃を突き付けられ、盾とされている事に緊張と恐怖が織り混ざっているのだろう。彼の身体は小刻みに震えていた。

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