第47話

「やめろ、このバカ!」


 気が付けば病院を抜け出した時のように、身体が動いていた。轟木はセンターの入り口数メートル前まで飛び出すと、持っていた拳銃をゴールドに向けた。


 それを見たゴールドは、「おっ」と軽く声をあげた後、老婆を押す力を抜いた。


「根性あるな、あんたが交渉すんだ?おっさん、名前は?」

「轟木だ。見ての通り、しがない刑事をしている」

「『委員会』の犬か、安月給で大変だなぁ。ごくろうさん」

「断っておくが、その人を突き落とした瞬間、お前も無事ではないと思えよ」

「へいへい…で、さっそくだけど」


 ゴールドは、まるで邪魔と言わんばかりに老婆の身体を足元に投げ出すと、自分は窓枠に腰を落ち着かせて轟木を見下ろした。


「うちのボスはお待ちかねな訳よ。要求、聞いてもらえんだろ?」

「そう簡単に叶う要求じゃない事は、お前らが一番分かってたはずた」

「まあな。でも…案外、三つ目は叶いそうだな」


 ゴールドは視線を轟木から別の場所に移した。どこか遠くを見ているような眼差しに、轟木は「まさか…」と呟く。ゴールドが言った。


「レッド・ティアーズご一行様のご到着だぜ」

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