第46話
(いや、仮にどこかでこの騒ぎを知ったとしても…)
轟木は周囲の誰にも気付かれないよう、わずかに首を横に振った。
自分がユウヤの立場だったら、絶対この場には現れないだろう。何かおかしい、怪しいと真っ先に考えるはずだ。
ましてや、本郷宗一郎か椿 登志彦、どちらかを連れてこいなんて無茶にも程がある。いくらユウヤでも、この短時間でそんな真似ができるはずがない。
轟木がそこまで考えた時だった。ふいに、センターの四階部分の窓が開き、その向こうから迷彩服姿の金髪の男が顔を出してきた。彼は右手にナイフを持ち、左手は一人の老婆の髪を思いきり強く掴んでいた。
髪を掴まれて引きずり回されたのか、老婆の頬には擦り傷が見え、身体中の力をなくしてぐったりとしている。そんな老婆の姿を、マスコミのカメラが懸命に映していた。
マスコミのカメラが全部こちらに向いたのを確認してから、金髪の男は声を張り上げた。
「俺は『キリング・アーミー』のゴールド。たった今から要求に関しての交渉窓口をしてやる。おら、警察でも『委員会』でもいいから誰か一人、前に出てきな!早くしねえと…」
そう言って、ゴールドは掴んでいた老婆の髪を窓の外へ向けて引っ張った。為す術なく、窓枠から上半身が飛び出す形になり、老婆は「ひ、ひいぃっ…!」と甲高い悲鳴をあげた。
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