第45話

「課長、知らないんですか?俺はこう見えても、須藤と同じ年の頃から射撃は得意なんですが」

「今、我々は指示待ちなんだ。おとなしくしていろ」


 課長が肩越しに後ろをちらりと見ているので、轟木もそちらに顔を向ける。すると、二人から少し離れた場所で、例の派手な軍服を着た根岸が部下達に怒鳴っているのが見えた。


「いいか、貴様ら!『キリング・アーミー』はすでに壊滅している!おそらく奴らは『キリング・アーミー』を騙る模倣犯か、威嚇しているだけで実際は脆弱なテロリストに違いない。そんなバカどものふざけた要求など聞く必要は…」


 相変わらず、おめでたい頭してやがるなと、轟木は長い息を吐いた。


 だが、課長の言う通りだ。事態がここまで深刻さを極めると、警察はその指揮権を『委員会』に委ねて、従う他なくなる。根岸のような男でも、政府直轄の軍人である以上、なかなか逆らえない。


 クソッ、と短く舌打ちして、轟木はセンターを見上げた。


 『キリング・アーミー』が出した要求は、どれもこれも時間がかかりすぎるものばかりだ。


 しかも最後の三つ目は、自分達ではどうする事もできない。少なくとも、レッド・ティアーズがこのテロ騒ぎを聞き付けない限り、動きようがないではないか。

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