第42話
同じ頃、ユウヤは本郷宗一郎の自室にいた。その手には拳銃が握られ、部屋の中央の椅子に座る本郷宗一郎に向かってまっすぐ突き付けられている。
部屋に入るなり、いきなりそんな行動に出たユウヤを見て、リュウジはドアに寄りかかりながら呆れた声を出した。
「ユウヤァ…仮にも自分の孫が人質に取られてんだぜ。そんなふうに脅さなくてもいいんじゃねえの?じいさんの寿命縮まるぞ」
「…紗耶香だけ助けて、大和や正彦さんを見捨てられたら意味がないからな。お祖父様、今ここできちんと約束してもらう」
ユウヤのグラサンの中からの鋭い視線を、本郷宗一郎は全身で受け止めていた。恐れや焦りを感じさせない無表情さで、ゆっくりと椅子から立ち上がる。そんな彼に、ユウヤは言った。
「今から椿 登志彦を連れていくのは難しいでしょう。だから、俺はあなたを連れていく」
「…ああ。罪なき国民がこれ以上犠牲になるのは、ワシも耐えられん」
「俺は、紗耶香も大和も…あのビルにいる人全てを助ける。途中でその邪魔をしたり、裏切ったりしたら…!」
ユウヤは拳銃の銃口を宗一郎から外し、部屋の奥に飾られていたアンティークの壺に向かって引き金を引いた。拳銃から飛び出したプラスチック弾は彼の頬の横を通り抜け、壺を何十もの破片へと変えた。
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