第七章
交渉
第39話
「…お、お待ち下さい!椿様!」
『キリング・アーミー』の要求メッセージが流れてから、一時間後。『委員会』本部内の長い廊下を、椿 孝一が大股で歩いていた。
その顔はひどく紅潮していて、ずっと噛み締め続けていたせいか唇の端にうっすらと血が滲んでいる。明らかに、彼は怒りを覚えていた。
そんな椿の後ろから、三枝 環と他数名の部下が早足で追いかけてくる。誰もが皆、心配そうに顔を歪めていた。
「椿様!」
環の何度目かの大声に、椿はやっと足を止めた。肩越しにちらりと自分の部下を見ている。
環が言葉を続けた。
「拳銃も持たずにどこへ行かれ…っ、まさか…!?」
「そのまさかだったら、何だというんだ?止めるな、お前達」
正面を向き直り、椿は再び歩き出そうとする。彼の視界の先には、『委員会』の最高責任者である委員長、椿 登志彦のいる書斎が…。
それに気付いた部下達は、素早く椿の周りを取り囲んだ。そのまま彼の腕や肩を掴むと、口々に「はやまってはなりません!」「どうか落ち着いて下さい、椿様!」と叫ぶが、椿の目の奥に宿る激情は消えなかった。
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