第37話

『 私は、私の中の疑問を拭い去る事ができなくなってきました。


 もし、遠藤寛人が弟さんの手術費の為に、仕方なく犯罪に手を染めようとしたのだとしたら…。そして、私の妻と子を死なせてしまった事に責任を感じ、わざと悪態をついて、リ・アクトを受け入れたのだとしたら…。




 委員会様。遠藤寛人に弟がいたとなると、あなた方は必死になって彼を捜しだし、リ・アクトのやり直しを求める事でしょう。ですが、私は今ここに、裁人の権利を放棄し、死を選びます。どうか、無益な捜索はなさいませんよう、お願い申し上げます。


 最後に、この言葉が伝わるかどうかは分かりませんが…遠藤直人様。本来、もっと軽い罪で良かったはずのあなたの大事なお兄様の命を奪ってしまい、本当に申し訳ありませんでした。


榎木新一』

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