第36話
『 通常なら、決してあり得ない現象でしょうが、私の撃った弾が彼の命を奪う刹那、確かにそう聞こえたのです。そして、そのまま私の耳から離れませんでした。
直人とは誰なんだろう?何故、自分が死のうという時に、他の誰かを気にしていたのか?
どうしても気になり、私はあなた方には秘密で、大変優秀な探偵を雇いました。改めて、遠藤寛人がどんな人間だったのか知りたかったのです。
ですが、届いた報告書を読む度に、私の中の遠藤寛人へのイメージが消えていくのを感じました。
誠実で人様に気を配り、誰にでも分け隔てなく接する明るい性格。高校を中退し、家族の為に働いている好青年…。とても裁判の時の、「遊ぶ金欲しさだった」などと言った男と、同一人物とは思えませんでした。
そして、ここからが筆を走らせるのも苦しい事なのですが、やはりお話しすべきと思い、書き残します。
探偵は、遠藤寛人には家族がいると言っていました。両親は亡くなってましたが、直人という病弱な弟さんがいると。
しかも、その弟さんは、一刻も争う病状で、手術が必要だという事も…。私は背筋が冷たくなるのを感じました。』
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