第24話
「ユ、ユウヤ君…直人君がっ!」
いつもは冷静沈着なオガが、ここまで取り乱すのは相当な事だ。大体、彼には移植が必要なくなった直人と今本の二人を、A国ではなくB国に亡命できるよう手続きを頼んでいたのに。
「そうか…大丈夫、オガさん。俺がすぐに出るから」
ユウヤは妹尾を振り返って言った。
「妹尾、ハーブティーはもういい。酔いがすっかり醒めてしまった…」
†
ある新人タクシー運転手がいた。十年勤めた会社をリストラされ、やっとの思いでタクシー会社に就職できたというのに、研修を終えて最初に乗せた客が、何とも言えない表情の少年だった。
少年は何故かパジャマの上に上着を羽織っただけの格好で、しかも裸足だった。その上、ずっと俯き加減で何かブツブツ言ってるので、気味悪い事この上なかった。
とりあえず発進したものの、少年はすぐに行き先を言わなかった。その手には一応財布が握られていたから、タクシー強盗ではないだろうと思いつつも、運転手は控えめな声を出して尋ねた。
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