第23話

「確かに、私達の前に初めて現れたぼっちゃまは、直人様と同じ目、同じ表情をされておいででした…」


 妹尾がそっと静かに屈み、ユウヤが落とした拳銃を拾い上げた。


「ですが、ぼっちゃまは分かって下さったではありまんか。確か…大和様でしたね。いつか彼に会って誤解した事をお詫びしたいのでしょう?」

「…何で大和の事まで引っ張り出す。今は直人君の事だろ…」

「だからです。ぼっちゃまに大和様がいるように、直人様にはまだ今本様がいます。きっとぼっちゃまのように、憎しみだけでは何もできないという事を分かって下さる時が…」

「…っ、しゃべりすぎだ、妹尾」


 ぷいっと背中を向けてしまったユウヤだったが、その顔に照れが出てしまっている事を妹尾はよく分かっていた。


 ふっと微笑んでから、妹尾はユウヤの前まで歩み、再び持っていた濡れタオルを彼に差し出す。ユウヤは観念したのか、今度はちゃんと受け取った。


 妹尾は右手を胸に当て、深々と頭を下げた。


「ご安心下さい。直人様が早まった真似をなさいませんよう、テレビや新聞など、リ・アクトに繋がるものは病室から出していますので」

「ああ、くれぐれも頼む」

「では、しばしお待ちを。酔いが残りませんよう、ハーブティーをこしらえてまいり…」


 その時だった。地下から階上へ向かう階段の方からドタバタと駆け降りてくる音が聞こえてきたのは。そして、そのまま勢いよく射撃場のドアを開けたのは、ぜいぜいと激しく息を切らしているオガだった。

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