第20話
ユウヤが直人を連れていったのは、施設の一番東側にある一室だった。
そこは真っ白な祭壇が一つあるだけの部屋で、その祭壇には真新しい骨壺が一つ、静かに佇んでいる。
あまり詳しくないが、レッド・ティアーズが元加害者やリ・アクト対象者を助けているという話くらいは前の病院にいた時、テレビで見て知っていた。
そのレッド・ティアーズのリーダーが目の前にいて、こうして一つの骨壺を見せてくれている。まさか、まさか…!
「君の兄さんは、君と一緒に生きたかったばっかりに、罪を犯してしまった」
ユウヤが静かに語りだした。
「今本さんの依頼で俺達は動いたが、彼は頑として拒んだ。いつ叶うか知れない通常刑を待つより、リ・アクトを受けて君の一部になる事を選択したんだ」
直人は自分の下腹部に手を当てた。善意ある登録者からの生体提供なんかじゃなかった。この二つの腎臓は、兄さんの…!
「…何で…何でだよ…」
ふらふらとした足取りで、直人は祭壇に近付いた。
「リ・アクトされるなら僕でしょ…?何で勝手に養子縁組なんかしてんの、兄さん…嫌だ、嫌だよこんなの!」
骨壺を掴んで、ぎゅっと抱き締める。あんなにたくましくて頼りになっていた寛人が、直人の胸に収まるくらい小さくなっていた。
「…許さない、絶対に」
ボロボロと溢れる涙の向こうで、直人の目は憎しみの色に染まり始めていた。
「殺してやる…!」
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