第9話
寛人は分厚いガラスの向こうで堂々と名乗るユウヤの姿に、ただ困惑した。
レッド・ティアーズの名前なら、勾留中、留置場の隣の牢に入っていた中年男から聞いた事がある。
確か、つい最近になって活動を始めたテロリストで、これまで何度もリ・アクトの刑場から対象者を救い出しているらしい。
やり方は様々だったが、どれも見事なほど鮮やかで、しかもその際、刑場を厳重に守っている委員会や警察、衛兵達の誰一人として、レッド・ティアーズに殺された者はいないという。
「人を殺さずに対象者を助けるたぁ、レッド・ティアーズは粋だぜ。俺も助けてくれってんだよ」
そう言って、十五回目の詐欺容疑で捕まった中年男はジタバタともがいていたが、まさかその時の話に出ていたレッド・ティアーズが、しかもリーダーだと言われているユウヤが目の前に現れるとは。
監視カメラは役立たずだと言われたが、それでも次に開かれた寛人の口から漏れ出た言葉は小さかった。
「…よくここまで来られたな。俺の本物の弁護士はどうしてるんだ?」
「変装には自信があってね。心配するな。彼なら自宅でぐっすり眠ってもらってるだけだから」
「本当に人殺しはしないんだな」
「それがうちの売り文句だ。さて、時間がない。本題に入ろうか」
ユウヤは胸ポケットから折り畳まれた紙を取り出すと、それをゆっくりと広げた。A4サイズの大きさまで広げられた紙には、あるグラウンドの見取り図が記されてあった。
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