第6話
寛人と刑務官が向かっているのは、留置場内にある接見室だった。寛人との面会を希望しているのは彼の弁護士である。
寛人は廊下をヒタヒタと歩きながら、直人の事を思っていた。
Z裁判にかけられたら、リ・アクト執行判決率は95%を超えるらしい。だったら弁護士にリ・アクトを回避してもらえなかった恨みつらみを愚痴るより、何とか刑務官には悟られない方法で直人の事を頼んだ方がいい。
どう言おう。前に面会に来てくれた今本さんが言うには、自分は遠い土地へ出張工事に出ているという事にしているらしいが…。
「おい、止まれ」
刑務官の感情のない言葉に、寛人ははっと顔を上げる。すぐ目の前に、接見室へと入るドアが立ち塞がっていた。
刑務官が「おかしな真似はするなよ」と念押ししながら、手錠と腰縄を外していく。寛人はじっと立ち尽くしたまま、接見室へのドアを見つめていた。
そうだな。ありきたりだけど、工事中の事故で死んだ事にしてもらおう。俺の遺骨は直人の手には渡らないだろうから、生き埋めになって見つからないとでも言ってもらうのが一番だ。
「よし、入れ」
再び刑務官の冷たい声が聞こえる。寛人は短く息を吐くと、ゆっくりと接見室のドアをくぐった。
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