第4話
「亡くなった被害者には申し訳ないが…このまま直人君まで命を落としては、寛人さんの行動は全てムダになる。それだけはなりません」
オガはきっと今本を見据え、小さいが力強い声で言い切った。
「ご安心下さい。今、うちのリーダーが寛人さんに会いに行っています。必ずリ・アクト執行日に助けてみせます」
狭く細長い廊下を、手錠に腰縄をつけられた寛人が、刑務官に引きずられるようにして歩いていた。その顔に覇気はなく、終始俯き加減だった。
寛人がZ裁判において、リ・アクト執行判決が下されたのは三日前の事だ。罪名は、“二人分”の命を奪った事による殺人罪とされた。
最初の取り調べの際、刑事にそう聞かされて、寛人は反論した。被害者・榎木洋子(えのきようこ)には申し訳ない事をしたが、彼女以外は誰も死なせていない。きっと何かの間違いだ。
「お願いです、ちゃんと調べて下さい。申し訳ない事をしたけど、俺はあの人しか…」
「これを見てもまだそんな事言えるのか?ああ!?」
野太い声で怒鳴りながら、刑事は一枚の書類を寛人に突きつけた。書類の上部には遺体解剖報告書と書いてあり、何行目かの行欄に『妊娠三ヶ月目の胎児あり』とあった。
「被害者の腹にはな、もう一人いたんだよ!分かったか、この人殺し野郎が!」
その日から、寛人の目に生気が失われた。
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