第3話

「レ、レッド・ティアーズのリーダーは、若い男だと聞いていましたが…」


 怪訝な表情を浮かべながらやっと口を開く今本に、オガは「はい、そうです」とあっさり答えた。


「先日、めでたく二十歳になりましたので、一緒に祝いの酒を酌み交わしましたよ」

「なっ…寛人君と年が変わらないじゃないか!本当に大丈夫なんですか!?」


 思わず大きな声を出してしまい、はっと我に返った今本は、すぐに眠っている直人を振り返った。


 直人はまだ、寛人がしでかしてしまった事を何も知らない。いや、知られる訳にはいかないのだ。


 直人には何もかも秘密にしたまま、計画を進めなければならない。だからこそ、彼らに頼る他なかったのに…。


「あと、二ヶ月しかないんです」


 眠る直人の顔を見つめたまま、今本は声を振り絞るようにして言った。


「医者が言ってました。せめて片方の腎臓だけでも移植できれば、直人にはまだ時間ができると…」

「お手紙は拝読させていただきました。お兄様の寛人さんの適合検査、良かったそうですね」

「ええ。でも結果を待ちきれなかったんでしょう。だからあんな事をしでかしてしまった…」

「……」

「直人だけを養子にしてくれと頼まれた時に気付くべきでした。万一捕まっても、直人に迷惑をかけないようにと考えたんでしょうが…」

「まさか、リ・アクトにかけられるとは思わなかったんでしょうな」


 オガはゆっくりと直人に近寄り、その頭を優しく撫でた。

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