第2話
直人は視線を今本から天井へと移した。シミ一つない、真っ白で無機質な天井。蛍光灯の明かりがこうこうと眩しいはずなのに、また意識が遠退き始めた。
「先、生…」
眠いせいなのか、それとも酸素マスクが邪魔をしているせいなのか。直人の声はとても小さく、くぐもっていた。今本は聞き逃すまいと、片耳を直人に近付けた。
「何だ?直人…」
「言わ、ないでよ…?兄さんには…。出張先でまで…心配、かけさせた…くな…」
最後まで言い切る事ができずに、直人は再びまぶたを閉じた。一気に不安になった今本がナースコールボタンを押そうとした瞬間、誰かの手が今本の腕を掴んで止めた。
「彼なら、まだ大丈夫です。薬の副作用による眠気が覚めきってないだけですよ…」
「あ、あなたは…」
「初めまして、今本さんですね?私は、レッド・ティアーズのオガと申します」
そう言って、今本の腕を掴んでいた者――オガが優しく微笑んだ。
今本は驚きのあまり、完全に言葉を失った。な、何で国家認定国際検事がここにいるんだ!?
この一ヶ月、私が助けを求めて捜したのは、今、世間を騒がしているあのレジスタンスのリーダーだ。様々な手を尽くして、やっと一人の情報屋から、彼への連絡手段を得たというのに…。
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