第88話
再確認のつもりで、僕は美代子さんに聞いた。美代子さんは返事もせずに黙っていたが、それは彼女の強い肯定の意志だった。僕もそれ以上、美代子さんに何も言えなかった。
電話を切って戻ってくると、ケンと葵はチリの棺の前で肩を並べて座っていた。「何を話しているんだ?」と問えば、ケンはぷっと小さく笑って答えた。
「見て分からないのか?最初で最後の家族会議だ」
「家族会議?」
「ああ。今、チリに頼まれていたところだ。葵を頼むと」
「そうか」
僕は棺から少し離れた所に腰を下ろした。その途端、葵はむうっとむくれた顔をしながら、小さな手で僕を手招いた。
「パパもこっち!」
「俺はここでいいよ」
「そんなのダメ。パパもこっち来るの!」
膝を付いたままでにじり寄ってきた葵が、僕の腕を掴んで引っ張り始める。僕は苦笑しながらも何の抵抗もせず、葵のやりたいようにさせてやる。彼女はケンが座っている位置とは正反対の場所まで僕を連れていき、自分は僕とケンの間に挟まれるように真ん中へと座った。
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