第87話
「今度は、俺の番だろ」
「ショウ…?」
「チリの次の夢は、俺が叶えてやるよ」
「いいの?そんな事を言って」
悪戯を思い付いた小さな子供のように、チリはくすくすと笑った。
「こう見えて、私は結構な欲張りよ?夢なんかまだいくつも残ってるというのに」
「知ってるよ、お前のわがまま勝手ぶりは」
僕はそう答えると、大げさに肩を竦めてみせた。
†
『申し訳ありません、佐伯さん。健司さんと一緒にお伺いできなくて…』
受話器の向こうから、美代子さんの申し訳なさそうな声が聞こえてきた。彼女の事だから、きっとあちら側で深く頭を下げているだろう。美代子さんのそんな姿を簡単に想像する事ができた僕は、とにかく慌てた。
「い、いえ。そんな…俺の方こそ、高村を呼び出してしまって。美代子さんには不愉快極まりない事をしました」
『いいんです、事情を聞いたら少しは納得しましたから。私も、その智里さんって方にお会いしてみたかった』
「え…」
『もちろん悔しいですよ?嫉妬だってしてます、私も女ですからね。でもそれ以上に、智里さんにはお礼が言いたいんです。だから、ありがとうございます』
「…本当に、いいんですか?」
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