第79話
「わがまま勝手もいい加減にしろよ」
僕は言った。
「お前、人を好きになるって事を少しばかり軽んじていやしないか?俺や高村をからかって何が楽しい…」
「軽んじてなんかないし、二人をからかって楽しむような趣味だって持ち合わせてない。私は至って真剣よ」
「俺にはそうは見えないよ。チリも高村も、どうかしてる」
「どうして、そう思うの?」
チリは再び首を傾げた。どうしてと聞きたいのは僕の方だった。
健司が好きならば、どうしてチリは一人で葵を産んだのだ。
チリが好きならば、どうして健司は美代子さんと結婚なんかしたのだ。
そして、どうしてあの日、チリは僕にキスなんかしてきたのだ…。もう、何もかも分からなかった。
何分、何十分過ぎただろうか。短いような、長いような感覚に捉われたままの沈黙の中、チリがぽつりと「ごめん、ショウ…」と言ってきた。
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