第53話

ある日の事だった。二泊三日の出張教室を執り行う事になった先生と二人の先輩に連れられて、僕は県外の小さな町へとやってきた。


 一日に二回、二泊三日で六回の教室を行なうので、この時の荷物はいつもの倍以上あり、トラックの荷台はぎゅうぎゅうだった。


 前日の昼にはイベント会場へと到着していたのだが、大量の荷物をトラックから降ろして運ぶのにずいぶんと時間がかかってしまい、会場が何とか教室の形に仕上がったのはすっかり日も暮れ、腹の虫がけたたましく鳴り響くようになった頃だった。


「お疲れさん。皆、メシでも食いに行くか」


 先生のおごりで夕食をいただく事になった僕と先輩達は現金な返事を返して、先生の後をついていった。


 何が食いたいんだという彼の言葉に対して僕達の意見はばらばらで、飲食店が何軒か並んでいる公道に出ても一向にまとまる気配がなかった。結局は業を煮やした先生の一存で片隅に見えた小料理屋に入っていったが、僕としてはお好み焼きかラーメンあたりが希望だったので、正直あまり嬉しくなかった。

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