第43話
家を出て辺りをしばらく歩いていれば、同じく成人式を迎えると思われる振り袖姿の女の子達の姿がちらちらと見えるようになった。
彼女達はキャアキャアと黄色い声を発しながら互いの美しさを褒め合ったり、携帯電話のカメラ機能で撮影を繰り返したりしている。そんな様子を目の端で何度も留めていくうちに、僕の脳裏に浴衣を着た六年前のチリの姿が浮かんできた。
彼女も今日、どこかの町で着物を着て成人式に臨んでいるのだろうか。あの縁日の時のような紺色の着物で、髪もかんざしなどで結っているのだろうか。思わず笑みがこぼれた。
少し散策したところで、スーツの内ポケットに入れておいた携帯電話に健司からの連絡が入った。電話に出ると、何故か分からないが彼の声がとても弾んでいるように聞こえた。
『早く来い。公民館の前で待っているぞ』
あんなに成人式に出るのを嫌がってたくせに一体どうしたのだろうと思ったが、それを口に出す前に健司は一方的に電話を切ってしまった。彼らしくない行動を訝しく思いながらも、僕は公民館に向かった。
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