第二章
(1)[34~51P]
第34話
缶ビールを三本飲み干したにも関わらず、ケンは全く酔った様子も見せないで眠り続ける葵の頭をそうっと優しく撫でていた。
僕はといえば、まだ中身が半分以上残っている缶を小さく揺らして持て余している。元々アルコールに強い方でもないし、いつもは付き合い程度にしか飲まない。ましてや、こんな日にがぶ飲みしたいだなんて思えなかった。浴びるだけ飲んでヤケを起こせたらどんなにいいかと、頭の中で何度も考えた。
「いい父親をしてくれているんだな」
突然、ケンが言った。
「この一年と四ヵ月、お前から葵の写真が送られてくる度にほっとしていた。嬉しかったよ」
「何が嬉しいって?」
「最終的に、チリがお前を選んだ事をだ」
「バカを言ってくれるな」
僕は呆れた。結局、彼女は肝心な事を言ってはくれなかったが、僕は分かっているつもりだった。
僕はさらに言葉を続けた。
「言っただろ。俺はお前の代わりになどなれないし、なれって言われても断る。所詮、無理な話だからな」
「ショウ…」
「今でも自信がないのか?」
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