第29話
「ショウ!」
呼ばれた方に振り向くと、白くてふわふわした物体が僕の視界を奪った。びっくりして顔を横に向けてみれば、そこにはエヘヘと短い笑い声を出すチリがいた。
「上条…」
「食べる?」
そう言って、チリは手に持っていた綿菓子を僕に差し出した。ただの砂糖の固まりじゃないかとも思ったが、純白で柔らかそうな見た目につられてしまい、引き寄せられるように一口だけ食べてみた。
「おいしい?」
「甘いだけだろ…」
子供のように聞いてくるチリを見るのが急に恥ずかしくなって、僕は彼女から目を逸らした。チリは僕がもう食べないと分かったのか、ぱくぱくと残りの綿菓子を頬張っていた。
「何でいるんだよ」
「ショウが一人で行くのは寂しいだろうと思って」
「幼稚園児が初めて買い物に出るんじゃないんだから」
「寂しいよ?私は」
チリが言った。
「私、知り合った人とは全部仲良くなりたいから。誰かを嫌いになるのも、誰かから嫌われるのもお断り。一人でいるのは、さらにお断り」
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