(3)[25~33P]

第25話

球技大会から十日ほど過ぎた土曜日の夕方になると、僕達の町にあるたった一つの神社が、その年最初の縁日の屋台で埋め尽くされた。


 普段はそんなに参拝客もいないから、少し広めの境内はいつもがらんと静まり返っているというのに、屋台のランプが灯り始めた途端にたくさんの人達でごった返しとなる。こういう時だけ、人間は現金なものだなと思った。


 分かりやすいという事で、神社の賽銭箱の前が待ち合わせ場所になっていたが、神様の存在をあまり信じていない僕には、別にありがたいものでもない。小学生くらいの子供数人が面白がって小銭を賽銭箱に投げ込んでいくのを、ただぼんやりと見つめていた。


「まさか佐伯も来るとは思っていなかったよ」


 僕より先に来ていた健司が、僕の横にある大きな柱に寄り掛かりながら言った。他にも二、三人の男子が来ていたのだが、チリ達女子がなかなか現れない事に痺れを切らして、さっさと屋台の方へ走り去ってしまった。


 嘘やごまかしができない性分なのか、健司の顔は正直に「意外だ」と言いたげな表情を映している。ふんと息を吐き出してから、僕はしぶしぶ答えた。

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