第23話

ピンク色が眩しい新品同様の自転車だったが、その前カゴに置かれている学校指定のリュックサックは少し砂にまみれていた。今日の球技大会で汚れてしまったジャージが入っているのだろう。


「久しぶり、元気だった?」

「うん、まあ」

「ねえ聞いてよ、ショウ。私、今日はドッジボールに参加してたんだけどね…」


 リュックサックの事など気にも留めていないようで、自転車から降りたチリは嬉々とした表情で僕の顔を見ている。きっと、さっきの出来事を話して聞かせるつもりなのだろう。


 僕は彼女が言いだす前に、先手を取ってやった。


「内野に残ったのが、上条一人だけの大ピンチ。でも奇跡的にボールを奪って、後はお前の独壇場ってところか?」

「ピンポン、大正解!もしかして見てたんだ?」

「途中までなら」

「それなら、何で分かったの?」

「『たかむら』の予想を口にしただけ」

「それって、ケンの事?」


 チリが小さく首を傾げたが、すぐにぱあっと明るい顔になった。


「…そっか。ケンとショウって、同じクラスだったよね」

「健司だから、ケンか?あいつとは親しいのか?」

「幼なじみ」

「ふうん」

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