第16話
「そんなに大事なもん?」
僕が尋ねると、チリはこくんと頷いた。
「思い出になるでしょ」
そう言って、チリはフフッと笑っていた。
ある日の昼休み。僕は屋上の金網に背を預け、昼食の焼きそばパンやらカツサンドなどを頬張りながら、何となくグラウンドを見下ろしていた。
グラウンドでは早々に昼食を食べ終えたのだろう何人かの男子が、サッカーをして楽しんでいるのが見える。ああ、そういえばもうすぐ球技大会だなと僕は思った。
「佐伯」
首だけを回して校庭の様子を見ていた僕の耳に、誰かの呼ぶ声が届いた。反射的に振り返ると、二年になって同じクラスになった高村健司がちょっと呆れたような表情でそこに立っていた。
「何だ、『たかむら』か…」
「『こうむら』だ」
「どっちでも同じだろ」
「出席番号が変わるから困る」
そう言って、健司は僕の横にどかりと座り込んだ。その手には未開封のメロンパンが握り締められている。
「もうお前だけだぞ」
健司がメロンパンの包みを開きながら言い始めた。何の事だととぼけてみせたら、彼は少しむっとした顔をした。
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