第5話
チリへの第一印象は、とにかく騒がしいの一言に尽きた。
僕とは別の小学校からやってきたチリは、初めて出会うクラスメイト達に興奮していたのか、やたらと大声で誰にでも話しかけていた。当然、隣の席の僕も例外ではなかった。
「…私、上条智里!」
突然、机の前に回り込まれてそう言われても、とっさに返事ができるほどの反射神経を僕は持ち合わせていない。ぽかんと見上げてみれば、彼女の制服の真ん中でひらひらと揺れている青色のリボンがやたらと大きく見えた。
「ねえ、あんたは?」
チリがわくわくとした顔を僕に向けて言った。
「名前、何ていうの?」
「…佐伯、だけど…」
「下の名前は?」
「彰一」
「じゃあ、ショウね」
よろしくね、と言いながら、チリは軽くウインクをしてみせて僕の側から離れた。
この日のうちに、チリはクラス中の皆に挨拶して回り、キャアキャアと騒ぎながら一人一人の呼び名を勝手に付けていった。「ちさと」だから自分の事は「チリ」と呼んでほしいと付け加えてきたのは、その翌日の事である。わりとクラス中がそれを受け入れていたので、おかしいじゃないかと思ったのは、きっと僕だけだった。
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