第14話


 翌日の午前中の事だった。


 取ってきたコスメを定価の二割増しで別の少女達に売り渡してきた早紀は、稼いだ数万円を持って、とあるマンションに向かっていた。


 そのマンションは外装もセキュリティーもなかなか良くて、家賃はいったいどのくらいするのかは知らないが、とにかく高そうだった。


 そんな建物の中に躊躇なく入った早紀は、入り口の前にあるセキュリティーに暗証番号を入力し、その向こう側にあるエレベーターへ乗り込んだ。


 マンションの五階に辿り着いた早紀はバッグの中から鍵を取り出し、ある一室のドアを開ける。だが、その直後に漂ってきたむせ返る臭いに心底嫌な顔を浮かべた。


 短い渡り廊下を通り過ぎてリビングに入ると、部屋の隅のシングルベッドで裸の女が寝ていた。


 派手な化粧が滲んで残っているその女は二十代半ばくらいで、恍惚な笑みを浮かべて寝息を立てている。


 リビングの隣にあるシャワールームの隙間から、湯気と共にざあざあと湯が流れていく音が漏れていた。

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