第10話
早紀の目当ては、雑誌コーナーと隣り合うように並べられているコスメコーナーのリップスティックだ。
最近発売されたばかりの新色ばかりが、キラキラ輝く飾りの付いたポップと一緒に棚に置かれている。
早紀は左手にかけていたバッグのファスナーを半分ほどゆっくりと開けた。
…よし、後は隙を見ていただくだけ。早紀の心が沸き立った。
「お兄ちゃん、これちょうだい!」
少しして、お気に入りのお菓子を見つけられたのか、さっきの小学生達がいくつかの菓子袋を抱えてレジに向かうのが目の端に留まった。
「は~い、ありがとう~」
男性店員が満面の笑みを浮かべて、レジで小学生達を迎えた。当然、彼の視界から早紀が外される。
(チャンス♪)
慌てず、早紀はファッション誌を本棚に戻し、静かにコスメコーナーに歩を進めた。
目の前には片手を使うだけで充分な大きさのリップスティック。
そのうちの一つをさっと手に取ると、まるでそれが最初から自分の物であるというふうにバッグの中に入れようとした…。
その時だった。
リップスティックを持っていた早紀の手を、誰かの手ががっしりと掴んできたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます