第9話
早紀がコンビニの入り口の自動ドアをくぐった時、一人の若い男性店員が「いらっしゃいませ!」とさわやかな笑顔ではっきりとあいさつをした。
その声の大きさに一瞬だけ身体が萎縮したが、早紀はすぐに角を曲がって雑誌コーナーに向かい、適当に取ったファッション誌をぱらぱらとめくる。
それを読んでるふりをしながら、早紀はさりげなく店内の様子を確認した。
客は自分を除けば、ほんの三~四人。そのうちの二人は小学生くらいの子供で、少ない小遣いを握り締めて菓子コーナーを行ったり来たりしている。
もう一人は単身赴任をしている感じのサラリーマンで、弁当コーナーで物欲しそうに立ち尽くしていた。
早紀はちらりとレジを見た。さっきの若い男性店員としっかり目が合う。
だが、早紀はすぐに目を逸らさない。ここで目を逸らしてしまえば、自分は怪しい奴だと言っているようなものだと彼女はよく理解している。案の定、男性店員はにこっと愛想笑いをするだけだった。
どうやら今はこの男以外、他の店員はいないようだ。早紀もちょっと口元を上げてから、またファッション誌を読むふりを始めた。
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