第5話
タバコを始めたのは、ちょうど三ヵ月前からになる。
のどの奥に入り込んでくる煙の感覚にまだ慣れなかったが、確か何かの映画で観た時に、主人公の女性がタバコを吸っている姿が何となくかっこよかった事を覚えていた。あんなふうになりたいと思って、吸い始めたのだ。
早紀が大きな息と共に煙を吐き出した時、別の少女が少し苛立ったような声で言った。
「ねえ。そろそろミヤコの奴、マジで切らない?」
「何で?」
「だって…」
「ミヤコは誰かにチクッたりしないから大丈夫だよ」
早紀はもう一度タバコを吸い込んだ。また苦々しい味が口の中に広がる。
しかし、そんな様子を顔にも態度にも出さない早紀にますます苛立ったのか、少女はぐいっと食い下がった。
「はっきり言って、足手まといだよ」
「それは私が決める事だよ」
「切らないんだったら、いっそウリやらせようよ」
『ウリ』という言葉に、早紀の身体がぴくりと反応した。ぎろりとした目を少女に向け、そのまま動かない。早紀の迫力のある瞳に、少女もまた動けなくなった。
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