第4話

ミヤコは濡れて額に貼りつく前髪を払う事もできずに、呆然と早紀を見上げている。


 背筋がぞっとした。


 だが、それが水の冷たさによる自然な症状の為なのか、それとも早紀に対する恐怖によるものなのかは、どうしても分からなかった。


「いらないんだよ、そんなもの」


 早紀が言葉を続けた。


「罪悪感なんて持ってるから、私達は今の世の中で生きにくいんだ」


 早紀はミヤコを見遣った後、ふんと鼻を鳴らしてボックス席から立ち去った。他の少女達もぞろぞろと早紀についていく。


 ミヤコはテーブルの上に残された未清算の伝票を、ただぼんやりと見つめていた。




「やるじゃん、早紀」


 喫茶店を出て、少し歩いた所にいくつかのベンチが置いてあるだけの緑地公園がある。またタバコを吸おうとしてベンチに座った早紀に、少女達の一人が話しかけた。


「まさか、水ぶっかけるなんてね」

「あれくらいやんなきゃ、黙ってくんないじゃん…」


 くわえたタバコに火を点け、早紀は深々と煙を吸い込んだ。

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