第3話
涙声になってきているミヤコを見つめる早紀の目は、捕まえたネズミを爪先で弄んでいる猫のようにいたずらっぽく光っている。
ミヤコはそんな早紀の顔をまともに見る事ができなかった。
早紀はテーブルの端に置いてあった小さな灰皿にタバコをぐりぐりと押すように揉み消すと、「まあ、いいか」と呟くように言った。
「今日はもう何を言ってもムダだろうし」
「早紀…」
ミヤコは心底ほっとして頭を持ち上げる。すると、いきなり上から冷たい感覚が降ってきて、思わず「きゃっ!」と短い悲鳴をあげた。
ミヤコの目の前では、ボックス席から立ち上がって自分を見下ろしている早紀がいた。
その右手には中身が空になったグラスがあり、小さな水滴がその表面を伝っている。
ミヤコのずぶ濡れになった頭を見て、また周りの少女達が笑い転げた。
「ウザイ、その顔」
早紀が言った。
「何それ。まるで『私は悪い事しています』って感じの顔じゃん?」
「……」
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