第2話

「だって…最近あの店、店員の目が厳しくなってきてて。これで精一杯だったから」

「相変わらずヘタクソだね、ミヤコは」


 制服の少女をミヤコと呼んだのは、ちょうど彼女と向かい合わせに座っている金髪の少女で、名を早紀といった。


 十七歳の早紀はくわえていたタバコの煙を大きく吸い込み、溜め息と共に吐き出す。


 煙の臭いに、ミヤコはうっと顔をしかめた。


「前にも言ったじゃん」


 早紀が言った。


「びくびくおどおどしてるから、店員も気付くんだよ。最初から自分の物だと思って、さっさと取ってくればいいの」

「できないよ」


 ミヤコがそう答えると、早紀の周りの少女達がゲラゲラと笑いだした。中にはミヤコを指差しながら、「すっげえチキンな奴~」とからかう者までいた。


「できないよ…」


 項垂れながら、ミヤコは小さい声でもう一度言った。


「私、もうできないよ。もう許して、早紀」

「ダメ」


 早紀はきっぱりと言い放った。

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