1. [1~32P]

第1話

「…何だよ、これ。ノルマが足りないじゃん」


 街の中心部にある大きなショッピングモールの一角に、レトロで洒落た喫茶店があった。


 こぢんまりとしているが、マスター特選のクラシック音楽が店の雰囲気を穏やかなものにし、値段も手頃である事から女性客の人気も高い。


 その喫茶店の一番奥のボックス席に、四~五人の少女達が座っていた。少女達は、それぞれが自分の特徴をアピールするかのような挑発的な格好をしている。


 そして、そのテーブルの上には、彼女達が注文したジュースやケーキの他に、ここ最近テレビのCMなどで話題となってきている新作のコスメがいくつか散らばっていた。


「こんなんじゃ全然足りないよ。ちゃんとリスト渡したろ、何でこれっぽっちな訳?」


 ボックス席の中で、たった一人だけ黒髪で制服姿の少女がいた。


 他の者が彼女を取り囲むようにして席に座り、責め立てるような視線を向けてくる。


 制服の少女はかすかに震えながら、ぽつりぽつりと話しだした。

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