第50話
「美希!」
「…んぅ、良、ニ…ちゃん?」
美希はきょとんとした表情で良を見つめた。
「さ、さな、ちゃん…い、るぅ?」
「ああ」
良はすぐに頷いてやるが、美希は不思議そうに首を傾げた。
美希からすれば、部屋にいるのならどうして出てきてくれないのといったところだろう。
しかし、良と佐奈江の両親が死んだという事実すら理解できていない美希に、佐奈江の深い悲しみが分かるのだろうか。どうやって説明してやろうかと良が頭を悩ませていると、突然美希が両手を伸ばして彼の腕を掴んだ。
「良、ニイちゃ…!」
美希は良の腕をぐいぐいと引っ張り、アパートの階段を登り始めた。
「分、かった、分か…た!美希、偉い事考え、ました!」
「はあ?」
美希はにこにこと笑いながら、良の腕を引っ張る。やがて良と佐奈江の部屋のドアの前に辿り着くと、美希は先ほどよりさらに大きな声で言った。
「さ、なちゃ…あ、そぼ!りょ…ニイちゃんも、いるぅ!」
「おい、美希…?」
「良、ニイちゃ、んもいるから…美希、楽しいよ?さなちゃ…も、寂しい。なくなる!」
「……」
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