第48話
その養護施設に勤めていた細川は再三に渡って両親を説得したが、「引き取るつもりはない」「たまたまできた子供だ」「今の家族に知られるのは困る」などと言われ、彼らは美希の育児を完全放棄した。やがて美希は施設の園長の養女となり、「波根川」の姓を名乗るようになった。
「それでもいいのね?」
細川が、厳しい口調で良に問いかけた。
「これから先、美希ちゃんは生きていく中で様々な困難や差別に立ち向かわなければならないの。仙崎君は、美希ちゃんと一緒にそれに立ち向かう勇気ある?」
この時、良は難しい事は一切考えなかった。考える必要もなかった。
「美希は、佐奈江の親友なんだろ?」
良は力強く答えた。
「俺の妹の親友だ。だから、美希も俺の妹だ」
出会ってからというもの、佐奈江と美希はいつも一緒に遊んでいた。
佐奈江が美希の障害を知ったのは、またずいぶんと後の事になったが、二人の友情が薄れる事はなかった。
それどころか、佐奈江は同じ小・中学校に通う事となった美希の為に、学校や担任に自らの意見を出した。
美希の為、そしてこれから入学してくるかもしれない障害のある生徒の為の学級を作ってほしい。一般生徒にも理解を深めてもらえるよう授業や全校集会で話し合いたい…。
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