第45話
ふらつきだした両足に体力の限界を感じ、良は公園の砂場の前でへたり込んだ。口の中がからからで、呼吸する事さえ苦痛に思えた。
「み、美希、どこにいんだよ…」
誰も答えてくれる訳がないのに、息を切らしながら一人呟く。また悔しくて、悲しくなって、良の目から涙がこぼれた。
あんな事、言わなきゃ良かった。逆の言葉を言ってやれば良かった。
美希のせいじゃない。佐奈江はすぐに元気になるから、それまで一緒に頑張ろう…。
今なら言えるのに、どうしてあの時言ってやれなかったんだ…。
大きな後悔が良の胸を占めた、その時だった。
「……」
良はふと顔を上げた。何かが聞こえたような気がした。
「…な、ちゃ…」
微かに聞こえたような気がする。良は耳を澄ませてみた。
「さ…な、ちゃ…そぼ~…」
今度は確かに聞こえた。この十二年間、ずっと聞いてきた声。それと同時に、良はあと一ヶ所だけ捜していない場所があった事に気付き、再び走りだした。
良が辿り着いたのは、自分のアパートの前だった。そしてそこには両手に松葉杖を抱え、右足の痛みで表情をしかめながらも、懸命にアパートを見上げている美希の姿があった。
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