第41話
良が次に目を覚ましたのは、数時間後の事だった。自然に目が覚めたのではない。玄関の近くに置いてある電話機がけたたましく鳴り響きだしたからだ。
陽はすっかり落ち、辺りは真っ暗になっていた。そのせいか覚醒し切れていない重い頭を抱え、良はのろのろとした歩みで玄関に向かい、電話を取った。
電話の相手は病院の看護師だった。看護師はひどく慌てた声で「波根川さんがいなくなりました!」と短く言った。
霞みがかっていた良の意識が、一瞬でスパークした…。
†
良が病室に駆け込んだ時、そこにいるはずの美希の姿はどこにもなかった。何人かの看護師がバタバタと辺りを駆け回っているし、ベッドの側では充が今にも泣きだしそうな顔でがたがたと震えている。パニックを起こす寸前だと、良にはすぐに分かった。
「おい、お前…」
できるだけゆっくりと、優しく声をかけてやる。すると充はおどおどと良を見上げ、言葉を詰まらせながら話し始めた。
「ご、ごはんの前まで、い、い、いたんだよ。波根、川さんの、好きなもの…ばかりなんだよ。な、なの、なのにだよ、一個も食べてないんだよ、い、いないんだよ…」
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