第32話
そこまで考え始めた時、突然、良の頭に軽い衝撃が走った。
「…何だぁ?」
肩越しに振り返ろうとするが、軽い衝撃は二度三度と繰り返され、止まる気配がない。長椅子から立ち上がり振り返ってみると、良の目の前には見知らぬ青年がむっとした表情で両手のこぶしを握り締めていた。
「な、な、泣かせた、んだよ…」
青年は、言葉を詰まらせながら言った。
「あ、あんた、あんたが、はね、波根川さ…泣かせ、たんだよ!」
言いながら、青年は両手のこぶしを良の胸に軽く叩き付け始めた。
さっき、頭に食らった軽い衝撃はこいつのせいか…。
納得した良は大袈裟に溜め息をつき、青年の片腕をがっちりと掴むと、そのまま病院の外に連れ出した。その間中、若干の抵抗をしながらも、青年は「あんたが波根川さんを泣かせたんだよ」の言葉を何度も繰り返した。
入り口の自動ドアを抜け、青年を引きずるようにして中庭まで連れていく。青年は良を殴ろうとして、空いている方の腕をじたばたと振り回して暴れ続けていた。
「何なんだよ、お前は!」
掴んでいた青年の腕を乱暴に投げ出し、いらついた声で良が言った。美希を知っている事から、大体の見当は付いていた。
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