第30話

「…お前が原因なんだろ」


 冷たく美希を見下ろしながら、良は言った。


「刑事が言ってたけどな、俺は信じねえぞ?あの佐奈江が自分から道路に飛び出すなんて、絶対にありえねえからな…」

「り、りょ、良ニイ…ん。み、美希ぃ…」

「はっきり言えよ!」


 良がベッドのパイプを乱暴に殴った。金属独特の鋭い音が響き渡り、美希の瞳から大粒の涙が溢れ出した。


「言いたい事あんなら、はっきり言えよ!誰のせいでこうなったと思ってんだ!」

「りょ、うニイちゃ…」

「お前のせいだ、美希!お前の責任だからな!」


 言い放つと、良は踵を返して病室を出て行った。


 美希はただ一人泣きじゃくっていた。シーツを握り締め、短い嗚咽を漏らしている。引き付けを起こしそうになりながら、美希はずっと一人で泣き続けていた。




「…くそっ!」


 病院一階のロビーに辿り着いたところで、良のイライラはさらに募った。


 廊下の壁を蹴り、窓の縁を叩きながら進むので、その度に通りすがりの人々がびくっと肩を竦ませる。しかし、良はそんな人目も気にせず、目の端に留まった長椅子に荒々しく座り込んだ。

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