第27話

「お二人を撥ねた運転手は現行犯で逮捕しました。どうやら飲酒運転だったようです」

「……」

「これからじっくりと取り調べをしていきます。経過はまたお知らせ致しますので…」

「分かりました…」


 力のない声で返事をする良を見て、刑事は心苦しかった。彼らはほぼ同時にICUの中を見やり、横たわる少女に意識を移した。


「植物状態だそうですよ…」


 良がぼそりと言った。


「怪我自体は大した事ないそうですが、頭を打ってましてね。いつ目が覚めるか分からないって…」

「ええ、聞きましたよ」


 刑事は答えた。


「もう一人の女の子も、右足にヒビが入っているそうですね。痛かっただろうに…。そうだ、彼女のご家族は?」

「連絡つきません、会うのも嫌だそうで…」


 淡々と答える良に、刑事はそれ以上聞き出すのを控えた。


「刑事さん、教えてもらえませんか…」


 生気の失せた表情で、良は言った。


「何で、佐奈江だったんですかね…?」




 良はふらふらとした足取りで、病院の廊下を歩いていた。何も考えたくないのに、どうしても考えてしまう。何でだよ、何でなんだよ…!

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