第15話

まあ、いつもの事だから仕方ないかと彼が苦笑していると、少女の隣で同じように包装作業をしていた一人の青年が、彼女の肩をポンポンと叩いた。


「…は、は、波根川さん。さ、三時だよ。終わりだよ、終わりだよ。後は、僕がやるんだよ、や、やるんだよ…」


 もじもじと両手を動かしながらそう言う青年に、少女――波根川美希はポカンと見つめていたが、やがてゆっくりと微笑みながら、「は、は、はい。頑張、りました!」と答えてお辞儀をした。


 青年もそんな美希を見てにこりと笑うと、目の前の彼女に向かって両手を小さく振った。


「美希ちゃん!こっちこっち」


 そんな二人の様子を微笑ましく見つめながら、男性は美希を手招いた。


 美希が男性の元に素直に向かうと、彼は工場奥の事務室に美希を連れていき、彼女が身に付けていた真っ白な作業用の上着や帽子、手袋にマスクを手早く脱がせてやり、代わりに小さなカバンとポケットベルを渡してやった。


「今日、これからどうすんだ?」


 神経質にカバンの肩紐を両手で直している美希に向かって、男性が優しく聞いてきた。美希が良く分からないといったふうに首を傾げてみせると、今度はもう少しゆっくりとした口調で彼は言った。

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