第15話
まあ、いつもの事だから仕方ないかと彼が苦笑していると、少女の隣で同じように包装作業をしていた一人の青年が、彼女の肩をポンポンと叩いた。
「…は、は、波根川さん。さ、三時だよ。終わりだよ、終わりだよ。後は、僕がやるんだよ、や、やるんだよ…」
もじもじと両手を動かしながらそう言う青年に、少女――波根川美希はポカンと見つめていたが、やがてゆっくりと微笑みながら、「は、は、はい。頑張、りました!」と答えてお辞儀をした。
青年もそんな美希を見てにこりと笑うと、目の前の彼女に向かって両手を小さく振った。
「美希ちゃん!こっちこっち」
そんな二人の様子を微笑ましく見つめながら、男性は美希を手招いた。
美希が男性の元に素直に向かうと、彼は工場奥の事務室に美希を連れていき、彼女が身に付けていた真っ白な作業用の上着や帽子、手袋にマスクを手早く脱がせてやり、代わりに小さなカバンとポケットベルを渡してやった。
「今日、これからどうすんだ?」
神経質にカバンの肩紐を両手で直している美希に向かって、男性が優しく聞いてきた。美希が良く分からないといったふうに首を傾げてみせると、今度はもう少しゆっくりとした口調で彼は言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます